2020年11月1日(日)~30日(月)、東京(一部、神奈川)の100店で、福井県の食材を使った料理や日本酒を提供します。越前がにの最高峰「極(きわみ)」を満喫できる豪華晩餐にご招待するハッシュタグキャンペーンも同時開催!(当記事最後に詳細記載)フェア参加店の中から、2人の料理人に福井の食材の魅力を訊きました。
東京(一部、神奈川)の100店で、福井県の食材を使った料理や日本酒を提供します。この期間だけの限定メニューが登場します。
また、「dancyu.com」では「食の國ふくい ご縁フェア」に合わせて、福井の食材の魅力をたっぷり詰め込んだ3種類のセットを期間限定で販売します。
東京・青山の骨董通りから路地へと入った閑静な一角に、ミニャルディーズの専門店「アン グラン」がある。ミニャルディーズとは、プチサイズのお菓子のことで、フランス語で「上品さ、可憐さ」という意味もある。
ここで腕を振るうのが、シェフ・パティシエの昆布(こんぶ)智成さんだ。
昆布さんは、「オーボン・ヴュータン」を皮切りに、「ピエール・エルメ サロン・ド・テ」、南仏のパティスリー「リエデレ」、パリの2つ星レストラン「ラトリエ ・ド・ジョエル・ロブション」でデセールを担当と、華々しい経歴を経て2015年にこの店を立ち上げた。
実は昆布さんは、福井県福井市で天明2(1782)年に創業し、16代続く老舗和菓子店の生まれ。かつては“甘いもの嫌い”を宣言していた時期もあったという。
「子供の頃から周りに家業を継ぐのが当たり前のように思われてきた反発心もあり、中学3年生で両親に『自分は家業を継がない』と意思表明をしました。大学に進学してからは、常にアルバイトを3つ掛け持ちし、どれも少なくとも1年は続けて自分が何をやりたいのかを探し続けたのです。たまたま飲食店で調理スタッフに入ったら、それが楽しくて。それから妹に勧められて食べたオーボン・ヴュータンのお菓子の甘いだけではない複雑なおいしさに衝撃を受けて、フランス菓子の道に進むことを決めました」。
「お菓子には“力”がある、と信じています。嫌なことを少しでも忘れさせてくれたり、一瞬で明るい気持ちにさせてくれたり。お客様に少しでも幸せを与えられるように、お菓子づくりに日々ちゃんと向き合いたい。その勉強のために努力をすることはまったく苦ではありません」。
コロナ禍で、ワンプレートデセールやコース仕立てのデセールの提供が難しくなり、新しいアプローチとして誕生したのが、テイクアウト限定のパルフェ。その第4弾となるのが、福井県産のさつまいも「とみつ金時」を使ったパルフェである。
外側のクリーム、そして中にはアイスとしてとみつ金時が使われる。下層にはスパイスブリュレやカラメルソース、トッピングにりんごのジュレ、ピーナッツ、いちじく、チョコレートなどが盛られ、秋らしい彩りと味がふんだんに織り込まれている。
とみつ金時の魅力を、昆布さんはこう語る。
「濃厚で味が凝縮されていて、加糖をしなくてもいいぐらい甘く芋本来の味わいを楽しめます。秋のデセールといえば栗が王道ですが、さつまいもを使うことで差別化も図れます」。
ここ数年、故郷や家業を想う気持ちに変化が生まれてきたと昆布さんは言う。
「年を追うごとに、先祖から継いできた歴史の重みを感じるようになりました。家業を継ぐことも考えています。福井の食材への興味も深まっていますし、フランス菓子を学んできた自分のフィルターを通して伝統的なお菓子づくりを自分らしく継いでいけたらと思っています」。
一流の世界で研鑽を積んだパティシエが伝統的な日本のお菓子をどう解釈するのか。少し気の早い期待と愉しみが膨らむばかりだ。
正面に日本海、背には白山連峰。あわら市富津地区の「とみつ金時」が育つ畑の周りには、雄大な景色が広がっている。地元農家の牽引役でもある生産者、吉村智和さんはその理由をこう話す。
「地区全体で約30haの小さな栽培地ですが、その分、生産者が限られていて品質を保つことができます。大きな特徴は、毎年12月中旬頃より出荷するものはキュアリング貯蔵をしっかり行なっていること。収穫後は3ケ月以上の熟成を基本に、温度35℃以上・湿度95%の貯蔵をした後、今度は12℃・湿度85%の環境で貯蔵します。温度を変えることで身と皮の間に層ができ、病原菌が入らず、甘味も増すのです」。
相応の設備も必要な上にコストがかかり、どこの産地でも真似できる技術ではないが、富津地区では35年前から取り組んでいる。加えて地の利もある。
「潮風で運ばれてくるミネラルを吸収しやすい土地で、保水と排水のバランスがいい土壌のため、しっとりした食感に育ちます。紅芋系の品種で甘さは極めて上品です」。
カウンター席を中心に立ち飲みもできる、浜松町駅から程近くの「日本酒 室 MURO」。「北陸の地酒と肴と飯」がコンセプトで、雰囲気は気軽ながら、酒の品揃えと管理、おいしい飲ませ方は腰が据わった筋金入り。かゆいところに手が届くような料理も並び、多くの常連客がついているのも納得である。
店を切り盛りする澤中愛子さんは、酒屋で培ってきた豊富な知識に加えて大の日本酒好き。
それが認められて女将に抜擢された逸材である。開店前から現地へ飛んで蔵元を周り、開店後も幾度となく訪ねて交流を深めている。
「関西の出身ですが、今は私自身すっかり北陸が大好きになりました。この店を通して、お客様に北陸の魅力を伝えることでファンになってもらえたらうれしいですね」。
事実、「室」でその魅力を知り、福井をはじめ金沢や富山へ旅行に行くお客も少なくないという。
澤中さんは提供する料理のレシピ考案もしており、メニューづくりのキモは「お酒に合うこと」。デザートのような甘味まで、日本酒との相性を前提にしている。
同店が今回のフェアに絡めて提供するのが、「イノシシ」「越前えび」「越のルビー」を使った料理。もちろん相性のいい福井の日本酒も守備する。
澤中さん曰く、「福井のお酒は蔵ごとの個性が立っていて飲み比べがいがあります。華やかではないかもしれませんが、実直な味わいで食を引き立てるし、おいしさがしみます」。
さっそく、料理の解説と食材の魅力を追っていこう。
まずはイノシシを使ったハンバーグだ。
「ロース肉を店で挽き、隠し味に山椒を加えています。クセがなく脂にとても甘味があって、ともすると上質な豚肉のよう。ソースは、福井の地がらしを使ったものと、日本酒"福千歳"の蔵元・田嶋酒造が手がける味醂入りの飴色玉ねぎのソースを添えています」
「イノシシのローストは、ジビエが苦手な人にこそ味わっていただきたいですね。きれいな肉質を堪能できます。猟師さんの丁寧な処理のおかげですね。付け合わせの野菜にも福井産を盛り込んでいます。日本酒はグルタミン酸が豊富ですから、イノシシのイノシン酸と合わさって、一緒に召し上がることでよりおいしく感じてもらえます」。
「越前えびは頭がすぐ黒く褐変してしまうけれど、たまらなくおいしい海老ですね。甘味の強さも生かすよう、梨の果汁や味醂に醤油、日本酒、にんにく、唐辛子でつくる特製たれに漬けて、韓国のカンジャンセウ風に仕上げています。最後に福井の雲丹ひしおを加えることで、より日本酒に合うようにしています」。
「旨味の濃い越のルビーは、素材のよさを生かすよう塩とオリーブオイルのみを加えてグラニテに。いわば冷やしトマトです。トマトは冷凍すると旨味を感じやすくなるし、オリーブオイルと合わせることでさらにコクが強くなって、お酒のつまみになるんです」。
プロの手にかかれば、食材のおいしさがさらに引き出され、口福をもたらす味わいに。
期間限定の福井の美味を食べ逃しなく!
福井の西、越前海岸寄りの殿下地区の中山間部で猟をする、渡辺髙義さんの話を聞いた。イノシシが増えて獲り始めた約10年前は年に10数頭しか獲れなかったが、現在はシカと合わせて年100頭ほどに上るという。
渡辺さんのイノシシ肉を扱う料理人が口を揃えて、「きれいな味」と表現する。その理由について、渡辺さん曰く「うちらの山は椎や楢の木が多く、どんぐりがいっぱい落ちていて、天然の自然薯も多いんや。それを食べとるイノシシは脂ののりが早いでぇ、肉質がいいんや」。
仮にイノシシが罠にかかったら、朝一番に行って鉄砲で止め刺しして、その場ですぐ血抜き。解体施設まで車を飛ばし、そこで枝肉にして即冷凍。3日ほど冷凍室でぶら下げた後に、骨を分けてブロックにするという。
「ジビエは自然の肉やから、どんなもん食べてたかっちゅうのがわからん。だから、せめていい状態で出荷しようと思ってるんやぁ」。
料理をする人、食べて喜ぶ人を想う渡辺さんの素早く適切な処理方法もまた、ピュアなおいしさにつながっている。
地元で「ガサエビ」「ガマエビ」「ガラエビ」などと呼ばれる「越前えび」。数年前までは、漁獲量が少ない上、あまりに頭部分の変色が早いために外に出回らず漁師町だけで食べられていた幻の海老だった。
特長は、甘えびより一回り大きく、ぷりぷりした弾力があること。高品質で知られる福井の甘えびを上回る値がつくことも。
JF福井漁連越前支所長の井村和人さんはこう言う。
「越前えびは甘味が濃厚で、ミソはせいこがにのミソのよう。刺身だけじゃなく、煮ても焼いてもフライでもいける。身が硬くならないんです。僕らは味噌汁にも入れます。1日経つと色は悪くなるけどさらに甘味が出るので、地元じゃそっちを好む人もいます」
現在は、船内冷凍をしたり、むき身で冷凍することで全国への発送が可能になった。幻の海老は今やどこへでもひとっ飛び、県外の人々の舌をうならせている。
「越のルビー」とは福井県が誇るミディ(中玉)トマト。一大生産地のひとつ、日本海にほど近い福井市白方町の新谷明弘さんの畑を訪ねた。
ビニールハウスの中の地面は意外なことに砂地。この辺り一帯の土壌の特徴で、その日は雨混じりだというのに、靴についた砂はさっと払えるほどサラサラだ。
「越のルビーは糖度が高く、8度前後。一般的な大玉トマトより3~4度高く、ビタミンCは約2倍。皮も薄いですね。砂地は水はけがいいけれど、水を多くあげすぎると果肉が割れて糖度が下がってしまうし、肥料も流れてしまいます。でもそこは経験値。農家それぞれが工夫し、湿度も調節しながら育てています」。
艶々の実をひとつ食べさせてもらった。もいだそばから青い香りが満ち、濃密で瑞々しい甘味と旨味で口いっぱいになった。
UN GRAN(アン グラン)
【住所】東京都港区南青山6-8-17
【電話番号】03-5778-6161
【営業時間】11:00~19:00
【定休日】水曜
日本酒 室 MURO
【住所】東京都港区浜松町2-8-10
【電話番号】03-6432-0408
【営業時間】火曜~木曜13:00~22:30(L.O.)、月曜・金曜15:00~22:30(L.O.)、土曜14:00~16:00
【定休日】日曜 祝日
※お店のデータは通常営業時のものです。時節柄、変更されている可能性があります。お出かけ前にご確認ください。
文:沼由美子 写真:オカダタカオ、出地瑠以