渋谷にあるタイ料理「CHOMPOO (チョンプー)」の森枝幹シェフがノルウェーサバを使って、グリーンカレーを披露します。脂のりがよく、年中いつでもおいしい身質を味わえるノルウェーサバの魅力を追うと、そこには未来を見据えた漁業の形がありました。
食べごたえのある厚い身と、ジューシーな脂が旨いノルウェーサバ。
日本で消費される塩サバの約7割がノルウェー産といわれている。私たちが食べているサバの多くは、遥か8330km離れた北欧から来ているのだ。1980年代から水産物の流通に関わり、水産資源管理に詳しい片野歩さんに話を聞いた。
「ノルウェーサバが大量に輸入されるようになったのは、1990年に日本で起きたマサバの不漁がきっかけです」と片野さんは話す。
戦後、サバは貴重な動物性タンパク源として日本人の食卓を支えていた。1990年代、食用になるサバの需要を支えてきた三陸沖のサバが、急激に減少してしまった。そこで白羽の矢が立ったのが、大きく育ったタイセイヨウサバが水揚げされるノルウェーだった。
「私も最前線でサバの買い付けをしていましたから、何度もノルウェーに足を運びました。当時からサステナブルに沿った漁業をしていて、魚は貴重な水産資源という考えが浸透していることが印象的でした」 と片野さんは当時を振り返る。
トレーサビリティーを徹底しているノルウェーでは、一隻ごとの漁獲枠を厳密に管理している。加えて、漁獲はサバが旬を迎える時季に限っているので、一尾ごとに価値のあるおいしいサバのみを市場に送り出せる仕組みだ。水揚げされたサバは、冷凍され日本へとやってくる。一年を通して、脂ののった身を味わうことができるのだ。
産卵を控えて痩せた親魚や、十分に育っていない未成魚の漁獲は避けられ、翌年以降の水産資源へと繋がっていく。
水産資源、漁師、消費者、三方良しの漁業スタイルがノルウェーにはあるのだ。
漁獲される時季が決まっているので、レストランを経営する料理人たちの間でも、常に変わらぬ品質で手に入るノルウェーサバを支持する人は多い。
「独特の魚臭さがなくて、身質が良いので料理に使いやすいです」と語るのは、渋谷にあるタイ料理レストラン「CHOMPOO (チョンプー)」の店主、森枝幹さん。
レストランだけでなく、社食やイベントも手がける新進気鋭の料理プロデューサーだ。「僕が好きなタイ料理でもノルウェーサバは大活躍ですよ」と、バイマックルーやバジルなど3種のハーブと合わせたグリーンカレーを披露してくれた。
オリエンタルな香りと出会ったノルウェーサバが口の中で柔らかく崩れると、たっぷり蓄えられた脂の旨味がじんわり広がる。大らかで懐の深い味わいに懐かしさを覚え、ノルウェーの海に想いを馳せるのだった。
ノルウェーサバ | 1/2尾 |
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グリーンカレーペースト | 40g |
いんげん | 1/2袋 |
ココナッツミルク | 適量 |
牛乳 | 大さじ2 |
ナンプラー | 小さじ1 |
クラチャイ | 10g |
バイマックルー | 5枚 |
ココナッツシュガー | 大さじ1 |
タイバジル | 5g |
バゲット | 1本 |
サラダ油 | 適量 |
ノルウェーサバは骨を取り除き、2cm幅に削ぎ切りする。いんげんはヘタを切り落として半分に切る。クラチャイは薄切りする。
油をひいた鍋にグリーンカレーペーストを入れ、中火にかける。
焦げつかないように木ベラで混ぜながら香りが立ってくるまで炒め、グリーンカレーペーストに表記されている分量のココナッツミルクと牛乳を加える。
ひと煮立ちしたら弱火にして、ナンプラー、ココナッツシュガーを加えて味を調える。
クラチャイ、バイマックルー、タイバジルを加えて2分ほど煮て、ノルウェーサバといんげんを入れる。ノルウェーサバに火が通ったら、器にバゲットとともに盛りつけて出来上がり。
ノルウェーサバの特徴といえば、きめ細かく霜降り状にのった脂からくるジューシーさ。ほかの食材と合わせても、そっと寄り添うような味わいで幅広い料理との相性が良い。
メインでもサブでも大活躍の食材だ。森枝さん曰く「ハーブや調味料を大量に使わず、魚の香りを生かして仕上げられるのはノルウェーサバならではの魅力ですね」。
ノルウェーサバは、厳密な資源管理によって、質も量も安定しているのがいいですね。シンプルに焼いても深い味わいになるし、サバ味噌などしっかり煮込む料理に使っても、深い旨味が残り、 程よい脂が感じられます。幅広い料理で持ち味を発揮すると思います。――植野広生
ノルウェー水産物審議会(NSC)
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1986年生まれ。調理専門学校を卒業後、オーストラリアへ留学。「Tetsuya's」で料理の基礎を学び、 京料理の「湖月」、マンダリンオリエンタル東京内「タパス モラキュラーバー」で修業を積み、独立。2019年「CHOMPOO」をオープン。
CHOMPOO
【住所】東京都渋谷区宇田川町15-1 渋谷PARCO4階
【電話番号】03-6455-0396
【営業時間】11:30~21:00(L.O.)
【定休日】不定休
文:河野大治朗 写真:森本真哉