
前回に引き続き今回もテーマは「肝臓」です。脂肪肝を予防するための食生活のポイントや、アルコールとの付き合い方、ホントはとり過ぎないほうがいい意外な食品などについて、食いしん坊倶楽部メンバーで医師の三浦雅臣さんにうかがいました。
肝臓のトラブルを引き起こす原因となる脂肪肝。最近はアルコールのとり過ぎ以外の原因、MASLD(マッスルディー・代謝機能障害関連脂肪性肝疾患)が増えているというお話しをしました。このMASLDは肥満や運動不足、糖尿病などの生活習慣病が一因といわれています。
脂肪肝は自覚症状がないため、ちょっとくらいALTの値(肝機能の数値)が悪くても、危機感を持たない人が少なくありません。しかし早めに手を打っておかないと、肝硬変などの重大な疾病につながりますので、気をつけましょう。
予防のためには、やはり摂取カロリーが消費カロリーを上回らないようにするというのが一番の近道です。自分のBMIや腹囲を確認して、食べ過ぎに気をつける。特に油っこいものや甘すぎるものはできるだけ控えるようにしましょう。
どうしても甘いものがほしくなったとき、口さみしくなったときは、例えばカカオ70%以上の高カカオチョコレートやナッツを少しだけ。どちらもポリフェノールが豊富ですが、ポリフェノールの働きが肝臓への脂肪の蓄積を防ぐという報告があります。もちろんとり過ぎはNGですが……。

そして気をつけたいのは、食事やお菓子だけではありません。ちょっと息抜きに甘い缶コーヒーや清涼飲料水を飲んだり、汗をかいたからといってスポーツドリンクを日常的にがぶがぶと飲んでいませんか? これらは思った以上に糖質を含んでいるものが多く、カロリーオーバーや血糖の急上昇に直結します。
腸活のため、と毎朝乳酸菌飲料を飲むことを習慣にしている人もいると思いますが、これも糖質が多く含まれているものは要注意。ビタミン補給に飲む市販の野菜ジュースも、商品によりますが、意外に果糖ブドウ糖液糖など糖質を多くとってしまう可能性があります。成分表示をチェックしてみてください。ビタミン補給を考えるなら、野菜や果物そのものを食べた方が、食物繊維などもとれるので得策です。
体にいいと思って続けていたものが、実は肝臓の負担になることがある。そんなことも覚えておいてください。
ちなみに、コーヒー好きには嬉しい話も。コーヒーは肝機能の数値改善や肝硬変・肝がんのリスク低下など、肝臓に対して保護的な効果があることが研究で示されています。無糖のブラックコーヒーを少し飲むのは良いかもしれませんね。
お酒を飲む人は、まずは飲み過ぎないことが大事です。晩酌にはおつまみが欲しくなりますが、から揚げやポテトフライなどの揚げものばかり……は避けたいところ。野菜スティックや冷ややっこなどをチョイスしてください。たくさん飲んだ翌日は休肝日にするなど、肝臓を休ませてあげることも忘れずに。
では、肝臓に効くと話題の「しじみエキス配合」「ウコン○mg」のようなドリンクやサプリメントは本当に肝臓を守ってくれるのでしょうか?
もちろん有効な成分が含まれているものもありますが、実際には、飲んだアルコールを帳消しにするほどの効果は期待しない方がよさそうです。むしろ体質に合わなかったり、有効成分を過剰に摂取してしまうことで、解毒作用に働く肝臓の負担を大きくしてしまうことも考えられますので、注意が必要です。
食事だけでなく、適度な運動も肝臓を守るためにはもちろん大事です。ただし、何度もお話ししてきましたが、運動習慣のない人が、急に激しい運動をする必要はありません。ウォーキングなどの軽い有酸素運動を毎日続けるとよいでしょう。
私はアメリカに引っ越してから、職場まで片道40分の自転車通勤をするようになりました。他に特別に運動をしているわけではありませんが、半年ほど経って、体重が減ってきました。少しずつでも続けると結果が出るということを実感しています。しっかり日焼けもしてしまいましたけどね。
肝臓対策も一朝一夕にできるものではありません。食事や飲酒、運動の習慣を少しずつ見直していくことが、肝臓を守る近道なのかなと思っています。

ジョスリン糖尿病センター リサーチフェロー。2014年東京大学医学部医学科卒業。2021年東京大学大学院医学系研究科博士課程修了・卒業、2023年東京大学医学部附属病院 糖尿病・代謝内科 助教。糖尿病や肥満症を専門に、最近では老化や睡眠、味覚についても探究を深める日々。
編集:出口雅美(maegamiroom) 文:久保木 薫 写真:Shutterstock