秋のスパイス料理
牛肉の旨味が溶け出した"ボルシチ"

牛肉の旨味が溶け出した"ボルシチ"

ロシアの定番スープであるボルシチは、牛肉の旨味とビーツの鮮やかな色味が特徴です。ボリュームもしっかり、栄養もたっぷり取れる一皿です。秋のおかずをおいしくするスパイスとハーブ使いをスパイスの達人・小堀紀代美さんに教えてもらいました。

“ボルシチ”のつくり方

温かい料理がそろそろ恋しくなる季節、汁気のある煮込み料理が食べたくなります。
ここで紹介するのは、ロシアの家庭料理でもあるボルシチ。牛肉の旨味が溶け出たスープは、あっさりとしていながらも奥行きのある味わい。ビーツ、玉ねぎ、にんじん、じゃがいも、キャベツと野菜もたっぷり入るのが魅力です。

使ったスパイス&ハーブは

黒粒胡椒は爽やかでウッディな香りがあり、牛肉との相性は2重丸。古くから薬草として使われてきたディルとローリエは肉や魚のくさみを抑える効果がある。ここでは、風味や旨味をアップさせるにんにくもスパイスと位置づける。

ディルとローリエ

*スメタナのつくり方…ヨーグルト(無糖)2カップをしっかりと水きりし、生クリーム大さじ5を加えてなめらかになるまで混ぜる。サワークリームのような感じ。

材料材料 (4~5人分)

牛肉500g(シチュー用)
オリーブオイル適量
2L
黒粒胡椒10粒
ローリエ2枚
ビーツ1個(250g)
じゃがいも1~2個
玉ねぎ2個
にんじん1本
キャベツ1/6個
ディル1パック
トマトペースト大さじ1
グラニュー糖小さじ2
米酢またはワインビネガー大さじ1
適量
粗挽き黒胡椒適量
にんにく1/2片
スメタナ適量(*)

1牛肉を煮込む

牛肉は大きめの一口大に切り、室温にもどす。鍋にオリーブオイル大さじ1を熱して牛肉を重ならないように入れ、表面を焼きつける。水100ml程度を加えて鍋底についた焼き焦げを木ベラでこそげ取り、残りの水、黒粒胡椒、ローリエを入れて強火にし、沸騰したらアクを取り、弱火で1時間30分ほど煮込む。最初の30分は蓋をしないで煮込み、その後、蓋を少しずらしてのせて煮込む。途中、アクが出たら取り除く。

牛肉を煮込む
牛肉はあらかじめ表面を焼きつけて旨味を封じ込める。長く煮込むので、大きめに切って使う。鍋の底の焼き焦げにも肉の旨味がついているので、水を足して木ベラなどでこそげ取る。

2野菜をカットする

ビーツとじゃがいもは幅5~6mmの拍子木切りにし、じゃがいもは水にさらす。玉ねぎはみじん切り、にんじんはせん切りにする。キャベツは太めのせん切りにする。ディルは葉を摘み、粗みじん切りにする。

3ビーツを蒸し煮する

フライパンにビーツを入れて蓋をし、弱火で10分ほど蒸し煮する。ときどき大きく混ぜ、ビーツが汗をかいてつやっとしてきたら、トマトペーストとグラニュー糖を加えてなじませ、酢を加えて混ぜる。

ビーツを蒸し煮する
ビーツはつやっとしてくるまで蒸し煮し、トマトペーストとグラニュー糖、酢を加える。これで色がキレイなまま。

4玉ねぎを炒める

別のフライパンにオリーブオイル大さじ1と1/2を熱して玉ねぎを入れ、きつね色になるまで炒める。オイル少々を足し、にんじんを加えてさっと炒める。

5牛肉と合わせ煮込む

1に4の玉ねぎとにんじんを加え、塩小さじ2を入れ、蓋を少しずらしてさらに弱火で40~50分煮込む。

牛肉と合わせ煮込む
牛肉がやわらかく煮えたら、炒めた玉ねぎとにんじんを加える。肉の旨味に野菜の旨味が加わる。

6ビーツを加える

じゃがいもとキャベツを加えて混ぜ、3のビーツを入れ、スープ全体がビーツ色になるまで30分ほど煮込む。煮詰まって水分がかなり減った場合は水を適宜足す。

ビーツを加える
蒸し煮して味をつけたビーツを加え、ビーツ色になるまでさらに煮込む。ボルシチの真骨頂。

7ディルを加える

ディルを飾り用に少し残して加え、にんにくをすりおろして入れ、塩で味をととのえ、ひと煮立ちさせて火を止める。

ディルを加える
仕上げにディル、にんにくを加えて、香りとコクをプラスする。にんにくの量は好みで加減する。

8器に盛る

器に盛り、残しておいたディルと粗挽き黒胡椒をふり、スメタナを添える。

完成

教える人

小堀紀代美

小堀紀代美 料理家

レストランのマダムからカフェ「LIKE LIKE KITCHEN」の料理担当を経て、現在は料理教室「LIKE LIKE KITCHEN」主宰。確実においしくつくれるレシピにファンも多い。おいしいもの好きが高じて世界各国を食べ歩き、そんな経験から、スパイスやハーブ使いの達人でもある。

※この記事の内容は、「四季dancyu 秋のレシピ」に掲載したものです。

四季dancyu 秋のレシピ
四季dancyu 秋のレシピ
A4変型判(120頁)
2021年9月13日発売/1100円(税込み)

文:松原京子 撮影:邑口京一郎

松原 京子

松原 京子 (フードエディター&ライター)

食をメインとした雑誌や料理の書籍などで企画・編集・執筆を手がける。この業界に入って早うん十年、やれ試食だ試作だ、新しい店ができたんだって、この店の味は残さなきゃ、と外食を続けているうちに体重が増え続け、20代の頃の倍の重さに!(本当に倍の数字です)。一口じゃおいしさなんてわからない、全部食べてこそ真意がわかると思っている。家では真っ当な調味料と安全な食材でつくるシンプルな料理を心がける。