ポルトガルの家庭料理
酸味がアクセントの"干しだらとじゃがいものグラタン"

酸味がアクセントの"干しだらとじゃがいものグラタン"

干しだらのグラタンは本来、たらとじゃがいもを別々に重ねますが、混ぜることでたらの旨味をじゃがいも全体に行き渡らせるのがポイントです!日本人にも合う、シンプルで美味しいポルトガルの食文化に魅せられ、かの地に通って料理を教わった馬田草織さんに家庭料理のあれこれをご披露いただきました。

ポルトガルの魚料理

大西洋の豊かな海の恵みを味わえる魚介料理。何よりポルトガル人の食生活に欠かせないのが、たらを塩漬けにして干したバカリャウです。いい塩梅にもどして使うには、少し時間とコツが必要ですが、独特の旨味と熟れた塩気は、生のたらでは味わえないおいしさ。紹介しているグラタンやコロッケのほかにも、フライドポテトと合わせて卵とじにしたり、さまざまな料理に使われています。ここでは甘塩たらで代用していますが、入手できたら、ぜひ本物で挑戦を。もちろん、新鮮な魚介類を使った料理も豊富。鰯にたっぷり塩をして炭火焼きにして楽しんだり、やわらかくゆでたたこをサラダやご飯で食べたり。毎日でも飽きない素朴なメニューばかりです。

ポルトガルといえばバカリャウ

ポルトガル料理に欠かせないバカリャウ。日本でなかなか手軽に入手できないが、もし手に入ったら表面の塩をさっと洗って水につけ、途中、水を2~3回換えながら、塩が抜けきらない程度に6~7時間を目安に塩抜きを。その後、料理に合わせて湯や牛乳でゆでて使用する。完全に塩を抜いてしまうとバサバサになり味も抜けてしまうので注意。

”干しだらとじゃがいものグラタン”のつくり方

ビネガーで炒めた玉ねぎの甘味と酸味もアクセント。マヨラーなら、チーズ抜きで全体を覆うほどたっぷりと塗ると、より本場風に。

甘塩たら

材料材料 (2~3人分)

甘塩たら*2切れ
じゃがいも2個
玉ねぎ1/2個分(薄切り)
にんにく1片分(みじん切り)
牛乳100ml
オリーブオイル大さじ1
白ワインビネガー大さじ1
マヨネーズ大さじ3
シュレッドチーズ適量
黒オリーブ適量
適量
黒胡椒適量

*甘塩でなく生たらの場合は、多めに塩をふり、キッチンペーパーで包んで冷蔵庫に30分以上(できれば一晩)おき、身を締めてから使う。

1たらを牛乳で煮る

フライパンにたらを並べて牛乳を入れ、蓋をして中火にかける。牛乳が沸いてきたら吹きこぼれないよう蓋をずらし、たらをひっくり返し、火が通るまで弱火で数分煮る。粗熱が取れてから、皮と骨を取り除いてざっくりとほぐす。たらを煮た牛乳もとっておく。

2玉ねぎを炒める

きれいにしたフライパンにオリーブオイルを入れて中火で熱し、玉ねぎとにんにくを炒める。玉ねぎが透き通ったら白ワインビネガーと塩少々をふり、酸味がとぶまで炒め、黒胡椒を挽く。

3じゃがいもをつぶす

じゃがいもをゆでて皮をむき、つぶしたところへ1のほぐしたたらと牛乳を加えてマッシャーでよくつぶしながら混ぜ、味をみて塩でととのえる。

じゃがいもをつぶす
牛乳で煮たたらは、皮と骨を取り除き、大ぶりにほぐせばOK。マッシャーでじゃがいもと合わせながらつぶすと、さらに細かくなり、じゃがいもともなじむ。

4焼く

耐熱皿に3を広げ入れ、その上に2をまんべんなくのせる。全体にマヨネーズをかけてからチーズを散らし、黒オリーブを飾る。オーブントースターまたはオーブンで、表面に焼き色がつくまで焼く。

完成

教える人

馬田草織

馬田草織

東京生まれ。出版社勤務の後、ライター、編集者として活動しつつ、ポルトガル料理研究家として自宅で料理教室「ポルトガル食堂」を主宰。著書に『ようこそポルトガル食堂へ』『ムイト・ボン!ポルトガルを食べる旅』など。

四季dancyu「秋のレシピ」
四季dancyu「秋のレシピ」
A4変型判(120頁)
2021年9月13日発売/1100円(税込み)

文:鹿野真砂美 撮影:宗田育子

鹿野 真砂美

鹿野 真砂美 (ライター)

1969年東京下町生まれ。酒と食を中心に執筆するフリーライター。かつて「dancyu」本誌の編集部にも6年ほど在籍。現在は雑誌のほか、シェフや料理研究家のレシピ本の編集、執筆に携わる。料理は食べることと同じくらい、つくるのも好き。江戸前の海苔漁師だった祖父と料理上手な祖母、小料理屋を営んでいた両親のもと大きく育てられ、今は肉シェフと呼ばれるオットに肥育されながら、まだまだすくすく成長中。