「リリエンベルグ」の焼き菓子
クリスマス、シュトーレン、リリエンベルグ。

クリスマス、シュトーレン、リリエンベルグ。

「リリエンベルグ」がワンシーズンでつくるシュトーレンの数は、6000個。予約で売り切れてしまう日もあるほど人気が高く、店を代表する菓子のひとつです。「この味はうちの店にしかできないよ」と横溝春雄シェフが語る秘密と、ひと手間を大切にしたレシピを教わります。

クリスマスの気配を感じる菓子

ウィーンで過ごした修行時代、菓子づくりを学んだ店でも、クリスマスが近くなるとシュトーレンをつくっていました。ドイツやオーストリアでは、強い香辛料やマジパンが入っていることが多くて、現地の味は僕の口にあまり合わなかった。自分の店でつくるときは、替わりにフルーツをたくさん使うレシピにしようと、ラム酒漬けのドライフルーツをたっぷり使っています。開店当初からラムは継ぎ足していてね。年を重ねるごとに風味が増して、うちだけの味になっているんです。

シュトーレンとは、ドイツ語で「坑道」という意味。切り分けた形が似ていることが由来となっている。雪が積もったかのような真っ白な姿は、白い布に包まれた幼子キリストに見えることから、中世よりクリスマスの献上品とされていた。たっぶりの砂糖とバターで表面をコーティングされ、保存性が高く、生地の中にはマジパンが入っているものやケシの実やチーズが練りこまれているものなど、種類は多岐にわたる。クリスマスを待つ4週間、中心から少しずつ切り分けて食べるのが習わし。

粉の相性やイースト菌の種類も、すったもんだを繰り返して今のレシピに決まってね。生地の成形も、バターの染み込みを良くするために、手間のかかる手包みに変えました。

試行錯誤の末に辿り着いたレシピを、横溝シェフと焼き菓子部門チーフの丸山晃一さんが披露します。工程は発酵を含めて7時間以上かかりますが、手間をかけてつくる価値は十分にありますよ!


横溝シェフはパン屋を営む父の背中を見て、ものづくりの世界に進むことを決めた。ふたりの兄はそれぞれパン屋と菓子屋を開いている。
リリエンベルグに勤めて20年になる丸山チーフ。新潟県三条市にある和菓子屋の家に産まれ、菓子職人を志した。

材料 材料 (10~15人分*1)

A ドライイースト*2 10g
A 塩 1.5g
A 準強力粉*2 400g
A 薄力粉*2 100g
A グラニュー糖 125g
A トレモリン 25g
ぬるま湯(30℃) 70ml
牛乳 125ml
卵(Lサイズ) 1個
無塩バター(練りこみ用) 150g
いちじくのコンポート*3 280g
B シナモン 1.5g
B ナツメグ 0.75g
B オールスパイス 0.75g
B アーモンド(軽くローストして刻む) 125g
B くるみ 60g
B レーズン 190g
B フルーツのラム酒漬け(レーズン、イチジク、ストロベリー) 125g
B オレンジピール(セミドライ) 75g
B いちじく(セミドライ) 40g
発酵バター(浸し用) 675g
グラニュー糖 適宜
粉糖 適宜

*1 大サイズ(30cm)の400g が1個、中サイズ(20cm)の200gが4個、小サイズ(10cm)の80gが5個できます。

*2 リリエンベルグでは、ドライイースト「サフ赤ラベル」、準強力粉「リスドール」、薄力粉「スーパーバイオレット」を使用。

*3 いちじくを3日間シロップとバニラに漬けたもの。市販のいちじくのシロップ漬けで代用可。

使う道具
竹串/漉し器/芯温計(食品の内部温度を測定できる針状センサを持つ温度計)/カード/ホイッパー/ 計り/霧吹き/フィルム/ボウル/鍋/めん棒/バット/木板/天板/網/ばんじゅう(天板に蓋を被せられるものなら代用可)/まな板/オーブン

下準備

卵、牛乳、バターは、室温に戻しておく。

1 粉玉をほぐす

Aをふるいにかけ、ボウルで混ぜ合わせる。

お菓子をつくるときに大切なのが、厨房の温度。厨房が寒いと材料も冷たくなって、生地がうまく発酵しないので、室温は25度くらいに保ちましょう。

2 卵液をつくる

ボウルに卵と牛乳、ぬるま湯を入れて、ホイッパーで混ぜる。芯温計で温度が23度から25度であるか確認する。

卵液の温度が低いと冷たい生地になってしまうので、うまく発酵しないんです。

3 生地をまとめる

1に2を少しずつ加えて、混ぜながらまとめる。

粉と卵液を混ぜ合わせた生地の温度が28度くらいになるのが理想だね。

4 グルテンを出す

材料がひとつにまとまったら、まな板に移してこねる。手首の部分を使って生地の真ん中を押し出すように。生地が滑らかになってきたら、グルテンが出てきた証拠。

蕎麦打ちの〝菊練り″というやり方と同じで、外側から内側に生地を巻き込んでいく。そうすると生地に菊のような模様が出てくるんです。

5 バターを練り込む

生地の表面にツヤが出てきて、手にくっついてこなくなったら、生地で無塩バターを包むようにして練り込む。

バターを手で直接触ると溶けてしまうから、生地で包み込むようにして、練りこむんですよ。

6 こねる

手首で押し出しながらこねる。ときどき、生地を少量取り、写真右のように伸び加減を確認する。

生地がうすく伸びて、なめらかに裂けるようになれば(写真右)こね終わりの合図です。

7 ドライフルーツを混ぜる

Bの材料を生地の中に、10回ほど折り込むように混ぜる。

生地を押し付けるように混ぜると、ラム酒漬けのシロップが生地に染み込んで、発酵の邪魔をしてしまいます。フルーツが固まらないように混ぜるぐらいで大丈夫です。

8 温度を測る

芯温計で生地の温度が26度〜27度であることを確認する。

生地の温度が高すぎると、コシがなくなります。逆に温度が低いと、発酵に時間がかかりすぎて生地が伸びてしまいます。

9 発酵させる

オーブンの上などの温かい場所(30度が目安)に生地を置き、乾燥しないようにラップフィルムをかけて、発酵を待つ。 1時間後、発酵具合を確認する。

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生地がひと回り大きくなったのがわかるかな。打ち粉をつけた指で生地の真ん中に穴を開けて、すぐに塞がらなければ良い具合に発酵できています。グーっと生地が戻ってくるようだったら、もう5分ぐらい置いて様子をみてください。

10 分割する

発酵した生地を大サイズ400g1個と、中サイズ200g4個、小サイズ80g5個になるよう、カードを使って分割する。

11 生地を丸める

分割した生地はまな板の上で転がして丸める。

手で優しく覆って、外側の生地を中に入れ込むように転がすと、表面が張ってくる。発酵で生まれた気泡が抜けて、焼き上がりにきめ細かい生地に仕上がるんです。

12 休ませる

すべて丸めたら、内側に霧吹きをした、ばんじゅうなどの蓋を被せて、温かいところで30分ほど休ませる。

生地にとって一番良くないことが乾燥で、ある程度の湿度がないと発酵もうまく進みません。

13 小サイズの成形、焼く

80g の生地は、手で覆うように丸めて天板へ。180度に予熱したオーブンで、35分焼く。

14 中サイズの成形、焼く

中サイズの生地は打ち粉をつけためん棒で小判形に延ばし、いちじくのコンポートを中心に並べる。下半分の生地を中心まで巻き込む。

上半分の生地をかぶせたら、めん棒でいちじくの両脇を押し込み、天板に並べる。180度に予熱したオーブンで、35分焼く。

15 大サイズの成形、焼く

大サイズは長方形に延ばして、長い辺を手前にする。いちじくのコンポートを中心よりやや下に並べ、中サイズと同様に生地を織り込む。

めん棒で両脇を押し込み、天板に並べる。180度に予熱したオーブンで、35分焼く。

16 浸し用バターを準備する

オーブンで生地を焼いている間に、浸し用のバターを用意する。中火にかけた鍋で発酵バター(浸し用)を加熱し、泡立ちはじめたら、別の鍋に漉しながら移す。

バターは火にかけると、たんぱく質が焦げることがあるので、濾して不純物は取り除きます。

17 生地に穴を開ける

生地が写真のように、全体が茶色く焼きあがったら、2cm間隔で竹串を刺して、穴を開けていく。

焼きあがった生地の表面は、食パンの皮みたいに固くなっているから、バターが染み込みにくいんです。

18 バターに浸す

バターを80度に温め、生地にたっぷりと染み込ませていく。

生地とバターどちらも温かくないと、中まで染み込まないで、表面だけビチャビチャになってしまいます。

19 グラニュー糖をまぶす

グラニュー糖を表面にたっぷりまぶして、下地をつくる。天板にのせて冷凍庫で約30分冷ます。

冬だったら、外に出しておくだけでも大丈夫。急速に冷ますことで外がサックリ、中がしっとりした食感に仕上がるんです。

20 粉糖をふりかける

生地が冷めたら、表面が真っ白になるまで濾し器で粉糖をふりかければ完成。


総工程時間、7時間45分。多いときは、1日で200個を超えるシュトーレンをつくるというのだから驚きです。どれだけ多い数でも、長い月日の中で編み出したひと手間を大切に仕上げるシュトーレン。真心を込めた手作業が光る、リリエンベルグのレシピです。



教える人

横溝春雄

ウィーン菓子屋のシンボルでもある「デメル」で、日本人としてはじめて働いた経歴を持つ。帰国後は「中村屋 グロリエッテ」でシェフとして研鑽を積み、1988年に独立。蕎麦好きのあまり、蕎麦打ち教室に通っていたことも。

12月はシュトーレンやクリスマスケーキなどを求める人たちで、いつも以上に長い行列ができる。

文:河野大治朗 写真:吉澤健太

店舗情報店舗情報

ウィーン菓子工房 リリエンベルグ
  • 【住所】神奈川県川崎市麻生区上麻生 4-18-17
  • 【電話番号】044-966-7511
  • 【営業時間】10:00~18:00
  • 【定休日】火曜日 第1,3,5月曜日 2019年1月1日〜1月8日
  • 【アクセス】小田急線「新百合ヶ丘駅」より15分