絶好調のキリンが発売したウイスキー「キリン シングルグレーンウイスキー 富士」が、世界で注目を集めている。昨年は「インターナショナル・スピリッツ・チャレンジ(ISC) 2020」のジャパニーズウイスキーカテゴリーで“ゴールド”を受賞。これまで味わったことのないようなおいしさを、フリーアナウンサーの杉崎美香さんが体験。キリンのマスターブレンダーに話を聞きました。「白ワインのような柔らかな香り」「晴れた日に緑の広がる場所で飲みたくなるような綺麗な味」……。ウイスキーの新しい扉が今、開かれます。
杉崎 キリンさんというと今、ビール類の売り上げが好調で、ニュースでも話題になっています。ビール類のイメージが強くて、正直、ウイスキーでも世界的に有名なことを今回、初めて知りました。
田中 ええ、実はそうなんです(笑)。少しだけ歴史を話しますと、富士山の麓にある、キリンの富士御殿場蒸溜所が完成したのは1973年。それから47年以上、ウイスキーをずっとつくり続けてきました。
特に、キリンがこだわりをもって追求してきた独自のスタイルが、世界の名だたるマスターブレンダーや専門家の皆さんに高く評価されるようになったのは、2010年代の後半からです。
杉崎 ウイスキーの国際的なコンテストで、いくつも賞を受賞されていますよね。
田中 直近では、30年以上熟成させた原酒だけでつくる「キリン シングルグレーンウイスキー 富士 30年」が、権威ある国際コンテストの「ワールド・ウイスキー・アワード(WWA)2020」で“ワールドベスト・グレーンウイスキー”を受賞。「インターナショナル・スピリッツ・チャレンジ(ISC)2020」でもジャパニーズウイスキーカテゴリーで最高賞となる“トロフィー”を獲得するなど、いろんな賞をいただくようになりました。
今日、杉崎さんに飲んでいただく「キリン シングルグレーンウイスキー 富士」も、「インターナショナル・スピリッツ・チャレンジ(ISC)2020」で “ゴールド”を受賞したウイスキーです。
杉崎 実は事前に「富士」を飲ませていただいたのですが、早速うかがいたいことがあります。
私の中でウイスキーというと、大人の男性がゆったりとクラシック音楽を聴きながら嗜むような、敷居が高いイメージ。あるいは逆に、ハイボールで気軽に楽しむ飲み方などでした。
でも、「富士」は違う。香りも味わいも優しくて、どこか身近に感じられると言いますか……。
田中 うれしいですね。最近、ウイスキーセミナーを開催すると、女性の参加者がとても増えてきています。
そして皆さん、「富士」を「凄く柔らかく、心地よい香りがふわっと立ってきて、まろやかで甘く感じる」「アルコールが46%もあると思えない」「とてもおいしい、魅力あるお酒ですね」などとおっしゃってくださいます。
杉崎 わかります。特に若い方は新しいものに敏感ですし、ウイスキーについては経験が少ない分、素直に向き合えるのかな、と思いますね。
田中 実を言いますと、私自身でも発見があったのが、今日ご用意したように、大ぶりなワイングラスで「富士」を楽しむ方法です。
ウイスキーはアルコール度数が高い分、いろいろな香り成分が液中に多く溶け込んでいます。「富士」ならではの香りを楽しみ、味わいを堪能いただくには、このような大ぶりで口のすぼまったワイングラスが向いているんです。おまけに、グラスの形状や大きさによっても香りや味わいが違ってくるんです。
杉崎 ああ、とてもいい香り。このワイングラスだと、「富士」の香りの素晴らしさがさらに際立ちますね。
グラスを近づけると、凄くまろやかでフルーティー、白ワインのような柔らかな香りが、最初に立ち上ってきます。自分の中にあった、スモーキーで刺激的なウイスキーのイメージとはまるで違う。とても優しい印象で、思わず笑顔になってしまいますね(笑)。
田中 それはまた、うれしいですね(笑)。ワイン、それも白ワインのような香りは、キリンがつくるグレーンウイスキーの特長の一つなのです。
富士御殿場蒸溜所は、カナダでつくられる芳醇で味わい豊かなグレーン原酒、アメリカのバーボンと同じ製法でつくられる華やかで重厚なグレーン原酒、そしてスコッチに使われる穏やかなグレーン原酒──3つのタイプのグレーン原酒を、本場と比べてもトップレベルのクオリティーでつくることのできる、世界でも類を見ない蒸溜所です。
「富士」は、熟成させた3つのタイプのグレーン原酒を、それぞれの個性を生かしながらブレンドしたもの。“白ワインのような香り”は、上質なカナディアンタイプの原酒に見られる個性です。
味わいはどうですか?
杉崎 まろやかで甘く、ちょっとメープルシロップのような香ばしさもあり……。
実は私、家で「富士」を飲んだ時、最初に出た言葉が“綺麗”。とても晴れた日に、高原とか、緑が広がる開放的な場所にテーブルと椅子を出して飲みたくなるような綺麗な味わいだなぁと思ったんです。
田中 お話が心に響きすぎます(笑)。私たちが、ずっと目指してきたウイスキーのスタイルは“ピュア&メロー”。「清らかな中に広がる、まろやかな味わい深さ」という意味で、もし一言に縮めるなら“綺麗”はぴったりくる表現です。
キリンの富士御殿場蒸溜所は、文字通り、富士山の麓にあります。空気は清涼で、原酒を熟成させるには理想的な自然環境にあります。
特に私たちが使う富士の伏流水は、富士山の標高2000mぐらいに降り積もった雨や雪がしみ込んで、頂上から水平距離で12kmしか離れていない蒸溜所にたどり着くまで、50年もかかる。それだけ磨かれた、清冽な水です。
その水を使って蒸留する時も、ほかのあらゆる工程でも雑味をそぎ落とし、磨き抜いて、透明感のある原酒をつくっています。
それがキリンウイスキーの最大の特長で、世界でも評価されるスタイルの源にあるのです。
田中 次は、水を少しだけ加えてみます。「富士」25mLに、ティースプーン1杯の水を入れます。どうぞ、試してみてください。
杉崎 あ、ストレートの時に感じていた甘くフルーティーな香りとはまた別の、フレッシュな香りが立ち上ってきました。味わいも甘さが増したような気がします。
田中 おっしゃる通りだと思います。フルーティーな中にも、りんごや洋梨系の香りがふっと出てくる。アルコール度数が少し下がることで、味わいも甘さが増しますよね。さらに、ティースプーン1杯の水を加えると……。
杉崎 味わいも、また変わりましたね。まろやかさの中に、少し重厚感というか、スパイシーさを感じます。
田中 そのライ麦パンを連想させるスパイシーさ、加えてオレンジマーマレードのようなニュアンスは、バーボンタイプのグレーン原酒の特長です。
こうして水を少しずつ加えながら楽しんでいただくと、「富士」の中に溶け込んでいた香りや味わいが、次々に立ち現れてくる。私たちの表現で言うと、ブーケのように花開いていくんです。
杉崎 私はお酒が大好きで、いろんなお酒を楽しむのですが、今日は新たな感動をいただきました。これまで自分の生活とはちょっと別の場所にあったウイスキーが、近づいてきてくれたな、という感じがしています。
自分の身近に素敵な音楽や本があって、自分なりに楽しむのと同じように、ウイスキーも楽しめる。「富士」なら、そんな存在になってくれるんじゃないかな、と思いますね。
田中 私たちにとっても、それが一番の願いです。酔うためのウイスキーではなく、皆さんの生活の中に、また一つ新しい楽しみ方が増え、心豊かな暮らしができるようなウイスキーをつくっていきたいと思っています。
杉崎 最後にブレンダーとして、「富士」にこめられた想いを聞かせてください。
田中 皆さんに喜んでいただける「富士」をつくりたい。それに尽きるのですが、なぜそう思うのか? 一つだけ加えさせていただけるなら、ウイスキーには世代を超えたつくり手の想いが詰まっているからなのです。
ウイスキーは“時の贈り物”と呼ばれるように、出来上がるまでに膨大な時間と、それに関わった多くの人たちの想いが詰まっています。長い時間をかけて丁寧に育まれてきた原酒、それぞれの特長を最大限生かすようにブレンドするだけでなく、つくり手たちの想いも表現できるように心がけています。
「富士」の中に、つくり手の想いも香りや味わいの要素として感じていただけたらうれしいです。
杉崎 いいお酒に出合いたいと思っている方は、大勢いらっしゃるはずです。
また今は、外に出かけられない方もいらっしゃるでしょうし、私のように子育てや仕事に追われている方も少なくないと思います。
そんな皆さんにとって、「富士」は生活に彩りを添えてくれる素敵な存在になれるんじゃないかと思いました。
私の場合は、子供たちを寝かしつけた後に、一人でも主人と一緒にでも、一口だけ「富士」を楽しむのがいいな……と実感したので、忙しい友達にもプレゼントしたいと思います。
本日はどうもありがとうございました。
写真:牧田健太郎 衣装協力:Apuweiser-riche、JUSGLITTY、jouete