d酒を造りました!
d酒はこうして造られた。其の弐

d酒はこうして造られた。其の弐

本日から伊勢丹新宿店で先行販売が始まり、dancyuの通販サイトでは予約がスタートしたd酒。始まりは、松崎晴雄さん、藤田千恵子さんの、熱くゆるい酒造り談義からでした。

佐渡でお酒を造りませんか?

日本海
d酒を造った学校蔵の2階の教室からは日本海が望める。佐渡での酒造りが、d酒をどう造るかの大きなヒントになった。

dancyuのwebの江部拓弥編集長が、d酒の企画をオファーしたのは、dancyu日本酒特集でおなじみ、日本酒業界を牽引してきた松崎晴雄さんと、藤田千恵子さんのおふたりだ。d酒は何を目指したのか。

編集長は言いました。
「去年、佐渡の学校蔵で酒造り体験して、造り手側に立ってみて思ったんです。日本酒ってわかってるようでわからないことがまだまだいっぱいあるんだなって。長年、酒蔵を取材されてきたおふたりが、造り手になったとき何が見えるんだろう。それがd酒をつくる、ひとつの出発点です。だから、松崎さんと藤田さんにどうしても造りに参加してもらいたいんです!」

対談者

松崎晴雄

松崎 晴雄

日本酒輸出協会会長。歴史をひもとき、日本酒の魅力を世界へ伝える日本酒界のマエストロ。各県の清酒鑑評会審査委員や、長野県や佐賀県の原産地呼称管理委員会官能審査員を務めるほか、「全米日本酒歓評会」「International Sake Challenge」などの国際的なコンペティションの審査員を担当。「日本酒ガイドブック」(柴田書店)など著書も多数。

藤田千恵子

藤田 千恵子

文筆家。日本酒の造り手に魅せられ、全国各地の酒蔵を訪ねること30年以上。時代と共に変わりゆく日本酒文化、そして酒蔵に生きる人々の伝え手として、執筆活動を続ける。著書に能登杜氏・天保正一氏を取材した「杜氏という仕事」(新潮社)ほか、「雪の茅舎」の高橋藤一杜氏の酒造りを追ったノンフィクション「美酒の設計」(マガジンハウス)がある 。

酒質設計
酒蔵取材歴30年。松崎晴雄さんと藤田千恵子さんがd酒チームの中心となって、酒質設計は行なわれた。
松崎
いやあ、それはありがたいことです。30年くらい前に、2週間ほど酒蔵に泊まり込んだことはあるんですけど、自分で酒質設計するのは生まれて初めてのことです。
藤田
わあ、ぜひやってみたいです。わかっているつもりになっていることがたくさんあると思います。取材は見学だし、作業は断片的にしか見ることができないので。あ、でも自分がまったく使いものにならなかったらショックだわ。大丈夫かしら。
松崎
酒造りは素人ですからね。学校蔵は素人でも体験できるのがいいですね。繁忙期じゃないから、通常の酒造りの邪魔にならないのがいい。
藤田
長年、酒造りの邪魔にならないように取材するにはどうしたらいいのか、ずっと考えてきました。まさか造りの側に立てる日が来るなんてね。松崎さんと私の酒蔵取材30周年記念になります。
学校蔵
あちらこちらに小学校時代の名残をとどめている学校蔵。素人が酒造りを体験して学ぶには、抜群のシチュエーション。
松崎
新潟の酒造りも改めて学びたいです。
藤田
30年前、新潟酒が淡麗辛口で一世を風靡したとき、私はブームにのらず、ほかの酒蔵を追いかけてたんですよ。最近、新潟の酒蔵を訪ねるようになって、素晴らしいことに改めて思い知りました。淡麗辛口という言葉が新潟の酒造組合では10年近く使われていないことも知らなかった。ほんとに勉強不足だったなあって。
松崎
日本酒の醸造の歴史を紐解いたとき、新潟の功績は大きいんですよ。日本で初めての速醸酛は、長岡の「お福正宗」。生酛造りが一般的だった明治の末期に、酒を腐らせない方法として酒母に乳酸を添加、いまでは一般的な造り方ですけどね。それから、酒博士の坂口謹一郎先生も新潟の上越出身ですね。
学校蔵で使っている酒米は、牡蠣殻農法で栽培。朱鷺が住む環境に配慮した「朱鷺と暮らす郷づくり認証米」に認定されていて、田んぼには美しい羽をもつ朱鷺が舞い降りる。

佐渡島で造る酒はどんなイメージですか?

藤田
ぱっと思いついたのは、田んぼとつながるお酒。学校蔵は朱鷺が暮らす田んぼでできた酒米を使っています。朱鷺が餌をついばみに来る田んぼなんです。
松崎
歴史の島、佐渡島で造る浪漫のある酒。昔、古本市で購入した大正時代の文献『佐渡酒誌』を読み直してみたんですが、当時の仕込み配合くらいしか書かれてなくてがっかり。酒蔵が20以上載っていました。いま残っているのは、真野鶴、北雪、天領盃、真稜、金鶴の5蔵ですね。
藤田
江戸時代は、江戸幕府直轄ですよね、金山開発のために。それと北前船のルートだから上方ともつながっていたんですよね。江戸と上方の文化が混じりあった独特の文化がいまも島に残っています。何か文化的アプローチがあるといいですね。
松崎
コンセプトは歴史の島、佐渡で造られた学校蔵というまったく新しい試みから生まれた酒。目指すは、佐渡の風土と革新の、ふたつの異なる要素を取り込んだ酒造り。これでどうでしょう。

編集長は言いました。
「あ、なんだかわくわくしてきました。出来上がるのが楽しみです!」

d酒
酒米 佐渡産越淡麗100%
越淡麗は山田錦と五百万石を掛け合わせた、新潟生まれの酒造好適米。ふくらみがあり、穏やかな味わいのお酒を目指しました。

精米歩合 60%
玄米を40%削った吟醸造り。味わいをもちつつ、綺麗な飲み心地となるように酒質設計しました。

酵母 14号酵母(金沢酵母)
江戸の頃、北前船によって能登の酒造りが佐渡にもたらされたのではないか。そんな歴史ロマンに思いを巡らして選んだ金沢酵母は、果実のような爽やかで落ち着いた香りが特徴です。

原材料名 清酒(純米酒) 佐渡天然杉
清酒(純米酒)に新潟大学演習林の佐渡渡天然杉を浸漬して、 無濾過のまま瓶詰めしたお酒です (日本酒愛もたっぷり詰まっています)。

品目 リキュール
学校蔵はリキュール免許でお酒を醸しています。

内容量 720ml
一合徳利4本分です。

製造年月 2018年9月
8月1日から7日かけて仕込んだお酒を、9月末に瓶詰めしました。

製造者 尾畑酒造株式会社
新潟県佐渡市真野新町449「真野鶴」を醸す、1892年創業の酒蔵です。現在の蔵元は五代目。尾畑酒造の尽力があって、d酒は完成しました。

製造元 尾畑酒造株式会社 学校蔵
新潟県佐渡市西三川1337-1 廃校になった西三川小学校を、尾畑酒造が改装して仕込み蔵として再生。d酒は木造の小さな小学校で造られました。
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文:神吉佳奈子 写真:当山礼子

神吉佳奈子さん.jpg

神吉 佳奈子(編集者)

1969年、酒どころ広島で生まれる。出版社を渡り歩き、家庭菜園雑誌や食雑誌、料理本の編集に携わる。2018年5月まで、100人の高校生と名人をつなぐ「聞き書き甲子園」の事務局に所属。食と農の手仕事を伝えるべく、フィールドワークを続けている。