作家、ミュージシャン、映画監督など幅広く活躍をしている辻 仁成さんは、本誌の連載「キッチンとマルシェのあいだ」でも書いているように、多彩で美味しい料理をつくります。その辻さんは「パリはスープの宝庫」と言います。パリに住んで18年の辻さんが語る、やさしいご馳走である“パリ・スープ”のレシピです。
フランス人はスープを「食べる」と言う。このことは連載開始時にお話ししましたが、今回は食べるスープの代表格、ミネストローネです。
日本のレストランで出されるミネストローネはどれも赤いですよね、そして野菜が大きい。トマト率が高いということなのですけど、ぼくが南イタリアを放浪していた20年前、ふらっと入ったご夫婦でやっていた小さなトラットリアで食べたミネストローネは赤くありませんでした。どちらかというと、緑に近かった。滞在中、毎日通い詰めた思い出があります。奥さんが「レオナルド・ダ・ヴィンチも食べていた16世紀のミネストローネにはトマトが入ってなかったの、だから本来、赤である必要がないのよ」と教えてくれたのです。「野菜全員がオールスターだから、美味しいのよ、お兄ちゃん」と言われて、目から鱗の出来事でした。そこで、ぼくはぼくなりのミネストローネを作ろうと思い立ち、この20年間、精進を重ね、ここに完成したのがこの最終形。
ごらん頂けばわかる通り、もはやスープではありません。でも、フランス人の言うところの「スープは食べるもの」思想に一致していませんか?辻家ではこれを玄米ご飯に添え、ミラネーゼをどんと上にのっけて食べたりもします。生クリームであえ、牛肉の薄切り肉にかけて食べたりもします。体調が悪い時、免疫力が下がった時にもおすすめですし、野菜嫌いだったうちの子はこの食べるミネストローネで野菜好きに変貌を遂げました。
辻家のミネストローネはまさに食べるスープの代表格なのです。ぜひ、挑戦してみてください。目から鱗のおいしさ、えへん、間違いなし。
玉ねぎ | 1個 |
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セロリ | 2本 |
にんじん | 1本 |
ズッキーニ | 1本 |
パプリカ | 1個 |
にんにく | 1片 |
ベーコン | 100g |
トマト | 大2個 |
固形チキンブイヨン | 1/2個 |
白ワイン | 大さじ2 |
オリーブオイル | 大さじ1 |
ローリエ | 1枚(なくても良い) |
塩 | 適宜 |
胡椒 | 適宜 |
パルメザンチーズ | 適宜(仕上げ用) |
にんにくはみじん切り、野菜は5mm角くらいの大きさに切り揃え、トマトは湯むきしておきます。
ココットにオリーブオイルをひき、にんにくのみじん切りを入れて中火にかけ、香りが出たら玉ねぎ、セロリ、にんじん、塩少々を加え、中火で焦がさないように15分ほどよく炒めてください(シュエ)。この作業がスープの味を深くします。
香味野菜を、ちょっとトロッとなるくらいまで炒めたら、そこにベーコン(野菜と同じくらいの大きさ)、ズッキーニ、パプリカ、白ワインを加え、また5分ほど根気よく炒めます。
具がひたひたになるくらいの水を加え、ざく切りにしたトマト(湯むきし、だいたいで良いので、種を取る)、ブイヨン、ローリエを加え、蓋をして煮込んでください。途中、トマトを木べらなどで崩しながら20分ほどじっくり煮込むのがコツです。
ココットの蓋を取り、具がスープから少し覗くくらいまで煮詰めたら塩胡椒で味を調え、完成となります。器に盛り、パルメザンチーズと粗挽きの胡椒をガリガリふりかけて食べてください。
別の食べ方として、玄米にこのミネストローネを添え、どんと上にミラネーゼを置き、パルメザンチーズをお好きなだけふりかけて、がつがつ食べるのもまた格別ですよ。ボナペティ!
文:辻 仁成 写真・協力:Miki Mauriac