食いしん坊倶楽部部長・植野が2023年に“印象に残った”16皿
2023年印象に残った16皿⑦東京・新宿御苑前「シェフス」の"ねぎラーメン"

2023年印象に残った16皿⑦東京・新宿御苑前「シェフス」の"ねぎラーメン"

どんなジャンルの料理でも、突き詰めるとシンプルで普遍的な味わいに集約される——。「シェフス」で食事をすると、改めて思います。雑味のない澄んだ美味しさと心地よい余韻が残る上質な上海料理。蟹や海老やいろいろ美味しかったのですが、締めのラーメンが沁みました……。

静かに広がる上品な味わいが五臓六腑に染み渡る……

いま、日本の中国料理店は四川料理が多いのですが(上海料理をうたう店で麻婆豆腐を出したりすることも……)、穏やかな味わいや海鮮を使った料理が日本人の舌に合っていたこともあり、かつては日本では上海料理や広東料理の店が一般的でした。
もちろん、四川料理などそれぞれの郷土料理にそれぞれの美味しさがあるのですが、「シェフス」に来ると改めて上海料理の素晴らしさに感動します。上海の上流階級に育ち、本物の美味しさを知る故・王恵仁シェフが1995年に店を開き、その味わいと雰囲気をマダムの王のり子さんが守り続けています……と書くと、ものすごく高級な店だと思われるかもしれませんが、店内は明るく気軽な雰囲気、でも料理は素晴らしく、マダムと気さくに話をしながらメニューを組み立てていく楽しさもあります。

この日は「いい上海蟹があるわよ」というマダムのお薦めで王道の“蒸し蟹”と「これも美味しいわよ」という言葉に従い“蟹みそ豆腐”を。名物の“車海老の香り蒸し”は是非。「このソースにはご飯が合うのよね、少しだけご飯も添えますね」。こうなりゃ蟹海老合戦だ!

春巻き
トマト玉子炒め

ということで“エビの春巻き”も。そうそう忘れちゃいけない“トマト玉子炒め”もお願いします。実は、BSフジ「日本一ふつうで美味しい植野食堂」でこの料理を教えてもらいました。トマトの種の部分を取り出して煮詰めてソースにし、トマトと玉子を煙が上がるほと強火で炒めて燻製のような香りをつける独特の調理法で深い旨味を出します。つくるのは難しいのですが、食べるのは簡単で美味しい!

上海蟹蒸し蟹
蟹みそ豆腐
車海老香り蒸し蒸し蟹は注文が入ってからスタッフ二人がかりで脚から身を取り出す丁寧な仕事ぶり。胴体は絶妙な蒸し加減で味噌や卵の濃厚な旨味がたっぷり味わえます。蟹みそ豆腐も軽やかな口当たりながら深い味わいでご飯にも合う! 香ばしさと上質な甘味が広がるエビの春巻き、エビの旨味がすべて凝縮したような車海老の香り蒸し(+ご飯)もやはり絶品。すべてが軽やかで雑味が一切なく、深い旨味が静かに広がり、食べるほどに喜びが大きくなっていきます。

蒸し蟹は注文が入ってからスタッフ二人がかりで脚から身を取り出す丁寧な仕事ぶり。胴体は絶妙な蒸し加減で味噌や卵の濃厚な旨味がたっぷり味わえます。蟹みそ豆腐も軽やかな口当たりながら深い味わいでご飯にも合う!

香ばしさと上質な甘味が広がるエビの春巻き、エビの旨味がすべて凝縮したような車海老の香り蒸し(+ご飯)もやはり絶品。すべてが軽やかで雑味が一切なく、深い旨味が静かに広がり、食べるほどに喜びが大きくなっていきます。

ねぎラーメン

かなり満足したのですが、「締めには、小さいねぎラーメンがいいかしらね」というマダムの一言に「もちろん、お願いします!」。
澄んだ上湯スープは、鶏や豚肉の旨味のエッセンスが香り、その味わいにそっと寄り添うような塩気がほっとするような美味しさを醸しています。絶妙な歯応えに茹でられた細麺も同調しています。そこにネギの香りがふわりと加わり、素晴らしいバランスとなっています。
あっという間にスープまで全部飲み干していました。
シンプルだけど、深い。そして心地よい。店を出た後も満足と余韻が気持ちよく交差する。本当に素敵な締めラーメンです。

文・写真:植野広生